WINNER

2018年 受賞作品

WINNER

[ 2018年 受賞作品 ]

Japan Leather Award 2018 グランプリ

Japan Leather Award 2018 グランプリ
(フットウェア部門 ベストデザイン賞)

吉田 卓巳
(個人)

Japan Leather Award 2018 グランプリ フットウェア部門 ベストデザイン賞 吉田 卓巳(個人)

人の足の特徴は様々だ。しかし、ひとりひとりの足に適応する靴は既製のものでは存在しない。そんな当たり前の問題を解決する為どんな足にも合う靴の提案をしたいと思った。この靴は革に切り込みを入れ、場所によって切り込みの形や素材を変えることで伸縮を可能にした。個人差が大きい足長に合わせ形状を記憶してくれるべジタンレザー。屈曲により負荷がかかる所には強度が必要な為、牛革の3倍の強度を持つコードバン。爪先と踵部分にはホールド力が必要な為、切り込みは入れずに柔軟性や耐久性を持つディアスキンを使用しフィット感を出している。ソールにも同様に切り込みを入れることで靴全体が動き、サイズの調節を可能にした。また、靴紐がその場所で固定をしてくれる為、それ以上に伸びることは無い。革が持つ形状記憶力を利用し、履き続けることでその人の足の形になっていき、その人の為の靴に変化する。そんな、ビスポークとも違う、あなただけの靴。

<審査員長 総評>
素材特性が違うレザーの組み合わせや二次加工として切り込み技法を用いて、工学的とも思わせる革靴のデザインは次世代の匂いを醸し出している。強度や加工面で商品化の壁は残るものの、可能性を秘めた秀作として審査員の評価が集中した。

各部門・各賞

フットウェア部門 フューチャーデザイン賞 廣瀬 友和(個人)

フットウェア部門 フューチャーデザイン賞
廣瀬 友和
(個人)

西洋にはスニーカーという、履けば弾むように歩ける靴がある。そんな噂を聞いた鎖国中の日本の革靴メーカーが想像で作った『すにいかあ』を想定した。
伝統的な革靴の製法(ウェルテッド製法)と材料で作ることにこだわり、二重の底はハンドソーンウェルト式製法で底付。内に反るように挟んだ5mm厚の強靭な本底革によるバネ機構が、歩行時の衝撃を吸収、また、体重移動に伴うバネ機構の弾性力により推進力を生み出す。
昔から高級靴に用いられる、「半カラス」を柄にアレンジし、現代的な個性を演出した。

<審査員長 総評>
“鎖国中の日本の革靴“という背景の設定が面白く、またその独創性をアイデアのみでなくモノにつなげたところがすばらしい。皮革によるバネ機能をつくりだそうとした靴底のデザインなど、材料特性を考慮した機能開発も評価された。

バッグ部門 フューチャーデザイン賞 宗形 直輝(MUNACHO!!!)

バッグ部門 フューチャーデザイン賞
宗形 直輝
(MUNACHO!!!)

非ユークリッド幾何学の考え方と、パラメトリックデザインの手法を駆使して製作いたしました。
熟練の職人の籠細工のようで、アルハンブラの緻密な透彫りのような、生命力を湛えた胚芽のような。
そんな複雑な造形と、生産性、拡張性、再現性を両立するプロダクトです。
これは、図面の状態から3時間、うち人の手による作業は2時間で完成します。
必要な物は図面と素材、レーザーカッターと針と糸のみ。縫製も穴に糸を通していくだけです。
つまり、世界各地の革細工の技術を持たない人が、全く同じものをゼロから3時間で製作することができるのです。
データの拡張性、シンプルな構造と「何か面白いことができそう」な造形には様々な人の発想が入り込む余地があります。
人固有の技術、土地固有の皮革素材、着彩や柄、仕上げを次々誘発する新たな時代のクリエーションの形として、様々な試みを生む『胚芽』として、このプロダクトを提案します。

<審査員長 総評>
職人修行をしていない人間でも3時間程度で制作する事を念頭に設計されたプロダクトであるという作者の提案は、コスト面、人材面など今日の皮革産業が抱えている問題に答えている。レーザー加工を皮革の特性を熟知した上で用いているため、造形に無理がなく、大変魅力的なデザインに仕上がっている。

バッグ部門 ベストデザイン賞 三谷 忠史(有限会社 エムディオフィス)

バッグ部門 ベストデザイン賞
三谷 忠史
(有限会社 エムディオフィス)

デザイナーや建築家のためのA3ケースであり、スケッチや図面またはラップトップコンピュータを収納するためだけの、プレゼンテーションバッグである。外側のフレームは本来バッグの内部に入るはずの芯材をむき出しにしている。それは、不意に落としたりしてしまった場合などの衝撃吸収バンパーの役割をする。バッグを使用しない時には事務所のインテリア空間の一角に立てかけることによって、アートオブジェの様な演出を図る。

<審査員長 総評>
金属フレームと皮革のコントラストは美しく、そこにトライした姿勢は二重丸で評価したい。重い、今更図面バッグなど、野暮な声は当然あがったが、それらに負けず選出されたのは、何よりも金属と皮革によるモノレベルを超えた空間的造形の魅力にあると思う。

ウェア部門 フューチャーデザイン賞 小森 匠(Masksmith)

ウェア部門 フューチャーデザイン賞
小森 匠
(Masksmith)

プラスチックやウレタン製のマスクにはない迫力、そして既存の革製品にはない生々しさを併せ持つ「固定観念に囚われないマスク」。モチーフはピエロです。
ウェットフォーミングに使用した型は粘土彫刻で1から作成しており、それぞれ3パーツに分かれています。白塗りを表現するために純白革を使い、髪の部分にあえてビビットオレンジを使うことによりピエロ特有のチープさを演出、左目をあえて外斜視気味に設置、そして口元に凄みを与えることで狂気を表現しました。
さらにマスク裏側には独自に編み出した完全防水加工を施しており、発汗によるマスクの変形もありません。
この作品に込めた狂気そして、黒い情熱を感じていただけたら幸いです

<審査員長 総評>
理屈抜きの出来映えに審査員が魅了されたが、これだけの力作ならば、仮面のピエロにもう少し時代性が感じられたら、さらに多くの人々を引きつける作品になったに違いない。いずれにせよ皮革造形の新しい可能性を感じた作品である。

フリー部門 フューチャーデザイン賞 平光 明佳(個人)

フリー部門 フューチャーデザイン賞
平光 明佳
(個人)

暑い!異常気象なのか2018暑すぎ!
そしてその猛暑のなか苦心する誰かの大事な人。。。
電力が供給できない状況のなかでなにか力になりたいと思い [バッグ自身が中身を自然冷却する]
をコンセプトとして制作しました。
電力も保冷剤も要らない。アルミの放射熱、トウモロコシの外皮で作った蒸散作用からの気化熱、ラジエーターからヒントを得た冷却構造で自分なりにカタチへと一先ず辿り着きました。
何故一先ずかは、まだ、効果は確証できていません。もうひとつは、最終目標です。
それは、これを誰でも簡単に手に入れることが可能な素材とシンプルと簡単な作りに辿り着いてはいないから。
私は、このバッグを誰でもどこでも作れるようにすることがこのコンセプトへの使命としています。
先ずは、第一歩です。

<審査員長 総評>
見る者(他者)も快適にする視点。昔の着物やのれん等の日本文化には夏冬の季節感があったように、カバンにも涼やかさが感じられるものがあってもいい。仕上がりはまだ途上だが、ホスピタリティ精神をもった新しいデザインを予感させた。

フリー部門 ベストデザイン賞 中山 智介(銀職庵水主)

フリー部門 ベストデザイン賞
中山 智介
(銀職庵水主)

革をもっと身近に、そして革の『可能性』を知ってもらいたいという想いから製作しました。
子供から大人まで手にとって楽しめる物が良いと思い、人気が再燃している『けん玉』に決めました。
実際に手にとって遊べる強度、飾って置けるクオリティーを特に追求しました。
これは研究を重ねた最新作です。

<審査員長 総評>
皮革の玩具はもっと市場にあっていい。皮革の材料特性を大いにいかして、長く使える玩具の開発はサスティナブル社会にマッチしている。この剣玉はそんな可能性を感じさせてくれた。木の剣玉に比べ、音のデザインが解決されてないと指摘があった。皮革の材料特性を生かしたカタチ、デザインになっていればさらに評価されたに違いない。

学生部門 最優秀賞 川嶋 望愛(兵庫県立姫路工業高等学校)

学生部門 最優秀賞
川嶋 望愛
(兵庫県立姫路工業高等学校)

昔、ヘンゼルとグレーテルの話を聞いた時お菓子の家があるなんて可愛いなと思いました。2人はお菓子の家を食べましたが、私はお菓子のカバンからお菓子を取り出し食べます。気持ちは昔聞いたヘンゼルとグレーテルの話の中にトリップし、可愛い気持ちになります。プリンにラズベリーチョコレートが溶けてかかっているようなイメージにしました。また、ポケットはまるで板チョコを連想させるような革を使いました。透明なビニールを使うことで夏は涼しい気持ちに、夏でなくても透明な部分からカバンの中のお菓子が見えて、そのお菓子に手を伸ばしたくなります。無邪気なヘンゼルとグレーテルと同じ気持ちに帰れます。

<審査員長 総評>
物語をモノづくりに持ち込む素直な視点がとても良い。透明なプリンにラズベリーとチョコレートがミックスされた造形もアシンメトリーでバランスが絶妙、とても魅力的なデザインに仕上がっている。思わず微笑んでしまう空気感が審査員に伝わっていた。

特別賞 小池 文枝(ヒノホ)

特別賞
小池 文枝
(ヒノホ)

牛ヌメ革を染色し葉っぱのようにするオリジナルの技術を使い、葉っぱのパスケースを作りました。
ICカードや電子マネーの時代に、葉っぱのお金のような遊び心のある作品です。
本物のサクラの葉っぱをモデルに鋸歯のギザギザや葉脈をつけており、裏面も同じように染色しています。
鞄に下げて使い込むごとに味が出て、枯葉のような渋い色合いに変化します。

<審査員長 総評>
硬く、クールなデザインが多いパスケースの中で、葉っぱのデザインは皆ほしいに違いない。つくり込みの良さに加え、古くなったらさらに質感があがることを予感させる、時間のデザインも評価された理由である。

審査員賞

<長濱 雅彦選> 矢内 徹(株式会社 吉田)

<長濱 雅彦選>
矢内 徹 (株式会社 吉田)

<選者コメント>
デザイン、サイズは最小限だが多目的に使えること。カードサイズを少し大きくしたこのミニマムケースは、現代人の決済方法の変化に見事に対応している。作者は生活の達人に違いない。

<ドン小西選> 及川 耕来(個人 The rooms (to the other side))

<ドン小西選>
及川 耕来 (個人 The rooms (to the other side))

<選者コメント>
デザインするにあたって必須なのは、①理念、②コンセプト、③個性、④目的。作品はそれらがしっかりとした本物のデザインである。一見格子のプリントのようだが、切込みを柄にし、手の込んだテクニックをサラッとモダンに見せているところなどはなかなかのものである。

<阿部 浩選> 三上 さやか(有限会社 野村製作所)

<阿部 浩選>
三上 さやか (有限会社 野村製作所)

<選者コメント>
楽しくてかわいい。ギフトとしても面白がってくれそう。海中の生き物シリーズとして色々と見てみたい。

<天津 憂選> 小林 束(専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ)

<天津 憂選>
小林 束 (専門学校ヒコ・みづのジュエリーカレッジ)

<選者コメント>
素材、色、光、そしてデザイン。どれをとっても目をひく作品でとても良い!2つ言わせていただくと、フリンジを大胆に抑揚をつけて、もっと長く、熱帯魚のベタのセクシーを強く表現してほしかった。

<伊藤 瞳選> 富田 慎太郎(HENNES)

<伊藤 瞳選>
富田 慎太郎 (HENNES)

<選者コメント>
シンプルなフォルムにすごく禅的な、静謐な美しさを感じました。ウッドとの合わせ方、革に描かれたモチーフ…無機と有機のバランスがきれいで、日本の革の可能性、魅力を無意識に訴えるようなパワーを感じました。

<有働 幸司選> 濱崎 誠也(ATW japan)

<有働 幸司選>
濱崎 誠也 (ATW japan)

<選者コメント>
一言でいって美しく完成度が高い作品でした。そして、職人的なテクニックにもかかわらず、デザインのアウトプットが”ハエ叩き“というのが、ユーモアがあってすごく印象に残りました。ただ、せっかくテクニックとセンスがあるので、別の大きい迫力のある作品が見たいです。

<鎌倉 泰子選> 岡田 俊夫(Dulles club(ダレスクラブ))

<鎌倉 泰子選>
岡田 俊夫 (Dulles club(ダレスクラブ))

<選者コメント>
引き具の場所を変える事、ちょっとしたことでスタイリングを変え、かつ、おしゃれ、作りの良さ、軽さ、小型化で、今っぽさもありながら、革製品の魅力を伝える事も出来るコンテストにふさわしいアイテムだと思いました。個人的にも欲しくなりました。

<佐藤 直人選> 椎名 賢(Ken Shiina Design Laboratory)

<佐藤 直人選>
椎名 賢 (Ken Shiina Design Laboratory)

<選者コメント>
口周りの紐通しのデザインが機能と両立している部分を高く評価しました。素材、芯使い、軽量化も含めた機能の全てがパーフェクトですがデザインを悟りきって無いのではと感じ、凄く惜しいと思いました。応援しています。

<橋本 太一郎選> 猪野 直也(TEATROV)

<橋本 太一郎選>
猪野 直也 (TEATROV)

<選者コメント>
刺青を施す様に焼きペンフリーハンドでの線画。染み込むようなハンドペイント。傷口をふさぐ縫合のような手縫いハンドステッチでの縫製。肌を皮革に置き換えて丁寧に自然の恵みである革を造り込まれている。命が吹き込まれている。そんな情熱と魂に気持ちが呼応します。

<矢口 真弓選> 井口 有希(nomuo)

<矢口 真弓選>
井口 有希 (nomuo)

<選者コメント>
想像力に長けている。見て、触れて、楽しく、 レザーは人肌のようで癒される。カニなど海シリーズもあると聞いています。これからも子供にも大人にも優しいデザインを作りつづけてください。楽しい作品をご提案いただきありがとうございました。

<吉田 けえな選> 細川 瑠璃(ke shi ki)

<吉田 けえな選>
細川 瑠璃 (ke shi ki)

<選者コメント>
フラットになり型崩れせずに持ち運べる点も評価ポイントとなっている。平面から立体を作るにあたり4種類の革を上手に使い、無理のないデザインに仕上げている。金具を最小限に3WAYを実現できるデザイン性は、和服など日本文化にも通じるデザインではないだろうか。色によって印象が変わりそうなので、今後に期待したい。

一般社団法人 日本皮革産業連合会(JLIA)

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