Wear
強靭で美しく、便利で、様々なライフスタイルになじむ財布。嵩張る中身を適切に配置し直し、最低限必要な物を可能な限りの小ささで収納する折り財布。
しかし、削ぎ落とした美しさを持つ物には類似点が増え、故にそういうプロダクトへの愛着が薄れてきていると感じる。
自分好みの装飾を求めるのも一つの解決方法だ。しかしそれは利便性の少しの阻害を意味する。
一度体験した利便性を捨てるのは難しい。
そこで素材と製造方法に目を向けた。
ガイドに沿い水を含ませ、折って金具で留める簡単な工程で完成する。実際ここにある作品は初めて革細工に触れた父が製作した。『自分が作った』感動を生み、ヌメ革の可塑性が少し浮いたパーツを平坦にし、経年変化で自分の色に染まる。
それら全ては愛着へ結びつく。生涯の相棒だ。
これは、寸法に無駄がない、製造に練度を要する物を、ビギナーが品質を落とさず完成させる、その手法のデザインである。