この靴は、これからも靴を作り続けるために創った靴です。
手で考える、という感覚があります。時として道具までが手のように、革の厚みや繊維の向きを指先へ返してくる。手が作りながら材料と呼応し、思考が頭ではなく手のほうで進んでいく。
自分の中にある「靴」という枠を広げようと模索していた時期に、寺で一碗の茶碗に出会いました。織部焼。整った美の常識を破り、歪みや崩れをそのまま新しい美として打ち出した器です。
靴は左右対称につくるもの——その常識に、歪みの美を持ち込みました。緑釉のコバ、鉄絵の文様、そして揃わないことの豊かさ。
この一足を、これから十年、新しい靴の美しさを探す旅の出発点にします。
ブランドとして大切にしている価値観・ストーリー
京都で二十年、革と向き合ってきました。掲げているのは「人の役に立つものを創り、仕事を通じて関わるすべての人の幸せを願う」ということです。車椅子で過ごす方のための靴づくりも、西陣織の職人との協働も、その延長にあります。
手で考える、という言葉を大切にしています。頭で描いた図面どおりに作るのではなく、革の反応を指先で受け取りながら形を決めていく。だから同じものは二つとできません。京都という土地には、そうして手で更新されてきた技が幾層も積もっています。その層に、靴という一枚を重ねたいと思っています。