様々な革の質感を楽しみながら、自宅や出先でお茶を味わうための茶箱です。革の天然素材ならではの優しい手触り、経年で味わいが深まり、数世代に渡り長持ちする点は、茶道具と相性が良いように思います。箱外装は希少な昔のメッシュ革と現代物の木目革。縁部分にはアドバン加工の革で、手摺れのような表現を試みました。外装だけでなく、御物袋、茶杓入れ、茶筅筒、茶巾筒などもすべて革でできています。六角形の革小箱は、香合もしくは菓子入れとしても使用可。箱の内装は肉厚のピッグスエードです。茶道と皮革工芸。ふたつの世界が共鳴しあうことで生まれる、自由で不易流行なスタイルは、人生をより豊かなものにします。
この作品は動物由来の皮革製品を新素材に置き換えようとする昨今の風潮へのアンチテーゼです。革は殺生を連想するためか、仏教と深い関係を持つ茶道においてはマイナーな存在。しかし、革は食肉加工の副産物であり、革を使うことは食物としていただいた生命を無駄なく使う、いわば供養。茶道思想とも深奥では共鳴し合うのではと思っています。知己とお茶を楽しみながら、日本文化やSDGsについて語り合えればと製作しました。