「燻(ふすべ)の信玄袋」は、藁をいぶした煙で色や模様をつける日本古来の燻技法の ‘革新と回帰‘ の表裏一体を表現しています。燻による革工芸は奈良時代に発達し、時代とともに武具や馬具、暮らしの道具へと姿を変えながら今に伝わっています。本作品は、鹿革・漆・絹・象牙・金など、奈良時代の宝物にも用いられた天然素材による造形美を「信玄袋」の姿へ集約しています。風合い際立つ燻革には、東アジアで広く吉祥の象徴とされる鳳凰唐草が漆と金箔で描かれています。そこには、シルクロードを経て伝来した文化の調和と発展、平和への願いがメッセージとして込められています。