『金継ぎ』。割れたり欠けたりした陶磁器を修理する日本の伝統技法。その『金継ぎ』から着想を得て、革についている天然の傷に金色の箔を施しました。天然の傷をその革が持つ個性や歴史と捉え、隠すのではなくあえて生かし、美しく魅力的な装飾としました。元々空いていた穴も装飾と捉えそのまま残しました。一箇所、強度的に問題がありそうな穴がありましたが、その穴は中国での陶磁器の伝統修復技法である『馬蝗袢』(ばこうはん)を参考にして穴を塞ぎました。裏から革を当て、真鍮で作った鎹(かすがい)でつなぎ留めました。
その革が持つ魅力を最大限に引き出した、アート作品の一面も併せ持つプロダクトです。
昨年から取り組んでいるジビエレザーの活用。今回使用したのは天然のイノシシの革です。
家畜ではないジビエレザーは、傷の多い革、虫食い痕の多い革、原皮管理の難しさからくる痛みの多い革などほとんどが何かしらの欠陥がある革として仕上がるそうです。
この作品で挑戦した『金継ぎ』や『馬蝗袢』から着想を得た技法を使えば、どんな革でも無駄にせず、魅力のある革へと生まれ変わらせることが出来ると思っています。