ウェア&グッズ部門
フューチャーデザイン賞
ラムレザー スタジアムジャケット
有限会社T.M.Y’s
1980年代に日本で流行し、現在もアウターとして根強い人気を誇るスタジアムジャケット。スタジアムジャンパー、あるいは略称でスタジャンと呼ばれることもあるが、基本的には同じものを指す。素材としては、ボディにウール、袖にレザーという組み合わせが多いが、現在はポリエステルなどを使ったものも市場に出回っている。
今回、加藤友樹さんが応募したのは、全面にラムレザー(生後1年未満の羊の革)を用いた贅沢なスタジアムジャケットだ。ウェアとしてのクオリティの高さが評価され、ウェア&グッズ部門 フューチャーデザイン賞に輝いた。
加藤さんの勤務先は、東京・墨田区を拠点とするT.M.Y’s(ティーエムワイズ)というタンナー。現在、「Leather Lab Tokyo」名義で自社の革を使用したジャケットやスニーカーを販売しており、「今回の受賞作もその中のアイテムのひとつで、数年前には完成していたものです」と、加藤さん。2025年、満を持しての応募と相成った。
加藤さんは作品のコンセプトについて、次のように話す。
「ラムレザーの最大の特長である軽さとやわらかさを活かし、気軽に羽織れるスタジアムジャケットをつくりたいと考えました。僕自身がタンナーで働いているので、『こういうスタジャンをつくりたい』というところから逆算して下地の革をつくれるのが強みです」
今回のスタジアムジャケットに使用したラムレザーは、牛革のスタジャンとは一線を画す軽やかさと柔軟性を兼ね備えており、見るからに着心地がよさそうである。
「牛革だと固さがあるため体にフィットするのに時間がかかりますし、普段使いするのにハードルの高さを感じる人が多いと思います。ラム革であれば初めからやわらかいため、少し肌寒い日にカジュアルに着ることができます。また、着れば着るほどにこなれていって、体になじみフィットしていく感覚はラムレザーならではだと思います」
このラムレザーは軽さとやわらかさだけでなく、ナチュラルな風合いも目を引く。
「顔料を厚塗りすると革の表情がなくなってしまうため、そうならないギリギリのところを攻めています。顔料の使用を最小限に抑えた水性染料仕上げにすることで、革の自然な風合いを残しつつ、強度も保てるちょうどいいバランスになっています」
また、革の発色もじつにあざやかだ。現在、全12色をラインナップしており、購入する場合には、身頃と袖でそれぞれ好みの色をオーダーすることができる。
「色味については、ドラムを使った染色がポイントです。今回使ったラムレザーは素上げに近く、染色がしっかりしていないとムラなどがそのまま残ってしまうので、ドラム染色で下地をきれいに染めています」
デザインという観点では、前面に「Japan」「Tokyo」の文字、背面に「日出づる国」をモチーフにしたイラストの刺繍が大胆に施されており、インバウンド層の心も捉えそうだ。
加藤さんは、これまでプロデュースしてきたレザーウェアについて次のように語る。
「やっぱり、何をつくるにしても革らしさを失わない、ということに尽きると思います。そのため、素上げタイプ、アニリン仕上げの革を使っていることが多いです。素上げは繊細なので、キズがつきにくい顔料仕上げにしている革が多いように思うのですが、革の魅力を楽しんでもらうためには、やはり素上げタイプの革の方がいいと思います。もちろん、リスクを背負って、という部分はありますけどね」
使い込むごとにやわらかく味わいが出てくる。耐久性が高くしっかりケアをすれば長持ちする。食肉の副産物なので環境への負荷が低い――。このように、革の魅力は枚挙にいとまがない。加藤さんは、そんな革の魅力をさまざまなレザーウェアで表現してきた。むろん、今回の作品も例外ではない。
今回、ラムレザーを使ったジャケットで入賞した加藤さんだが、その背景には、ジャケットを通して革の魅力を伝えたいという思いが強い。
「正直にいえば、一番アピールしたいのは革そのものです。ウェアなどを通じて、時間をかけて革を育てる楽しさをたくさんの方に知っていただきたいです」
ちなみに、T.M.Y’sにはフィッティング&オーダールームがあり、事前に予約をすれば、今回受賞したラムレザースタジアムジャケットをはじめ、さまざまなタイプのレザーウェアやレザースニーカーを試着することができる。
「これからもいろいろなメーカーやクリエイターとコラボして、T.M.Y’sの革の魅力を広くアピールしていきたいと思います」
加藤さん、そしてT.M.Y’sが発信するレザーアイテムから、今後も目が離せそうにない。
文=吉田 勉
写真=加藤史人