学生部門 最優秀賞
大阪のおばちゃんの魂
兵庫県立姫路工業高等学校
「動物の顔の立体感を、平面で表現したらおもしろいんじゃないかなって」
インパクト抜群の受賞作品について、国田さんはそう切り出した。
「そこで思い浮かんだのが、モザイク柄のお皿でした。地中海料理のお店とかで使われている、小さなタイルを敷き詰めたような仕上げの食器、ありますよね?」
今回は、タイルの代わりに、小さくカットしたレザーを使用。これを繊細に敷き詰めることで、どう猛な虎の顔面をいきいきと表現した。動物の中でも虎をモチーフに選んだのは、「純粋に、かっこよかったから」と笑顔で答える。
最終的に完成した作品は、すべて革で仕立てたオールレザーTシャツ。しかし、当初はウェアではなく、純粋なアート作品の想定だったと国田さんは言う。
「でもそれだと、レザーアワードに出品するにはコンセプトが弱いんじゃないかって。そこで先生たちと相談していく中でたどり着いたのが、大阪のおばちゃんの象徴ともいえる、アニマル柄のTシャツだったんです」
大阪で人気のアニマル柄Tシャツを、実際に動物の革で仕立ててしまうという斬新なコンセプト。このテーマが決まると、テーマカラーも自然と絞られていった。
「大阪のおばちゃんって、他人の領域にズカズカと入ってくるような印象があるけど、あれって、分け隔てない愛情があってこそだと思うんです。その愛情を表現するには、ピンクしかないなって。そのピンクが映える色ということで、ベースは黒に決めました」
眉の部分にさりげなくハートのモチーフを採用したのも、国田さんなりの「LOVE」の表現なのだという。
使用したピンク色は、全部で4色。そこに白を加えた5色の組み合わせで、見事に虎の顔の立体感を表現している。
「目だけ黄色にしたのがポイントです。目力を演出したかったので」
兵庫県立姫路工業高校は、2018年以来、毎年レザーアワードに参加。まず1、2年生からアイデアを募集し、そこから実際に出品する生徒が選抜される。今年は約70の提案の中から、9名が選ばれ、作品を製作した。
作品づくりにあたっては、さすが姫路。複数の地元タンナーが協力し、出品作品の設計やコンセプトに合ったレザーを提案、独自になめしてくれるという。今回、国田さんの作品のレザーを手がけたのは、姫路市のタンナー、株式会社オールマイティだ。
「『よりTシャツらしさを演出するためには、布地に近い薄い革のほうがいい』と提案をいただきました。0.5mmほどの薄さだったのですが、裁断時に伸びやすいので、なかなか難しくって。ミシンで縫う時にも気を使いましたね」
Tシャツは、オーバーサイズを華麗に着こなしている“おばちゃんスタイル”をイメージして、Lサイズをチョイス。そのため、縫製時にミシンの懐をくぐらせるのにも苦労したと、国田さんは話す。
「バドミントン部の大会もあってすごく忙しかったのに、本当に頑張っていましたよ。試合会場にまで革を持っていって、待ち時間に裁断していたって聞いています」
そう話すのは、国田さんの指導を担当している、姫路工業高校の外部講師、椎名賢さん。実は椎名さん、レザーアワードの常連で、過去には4回受賞。本年度も、バッグ部門
フューチャーデザイン賞に輝いており、今回は教え子とのダブル受賞となった。
「姫路工業高校では、生徒、教師、タンナーからなるチームで挑むのですが、もちろん、アイデア自体は生徒たちから湧き出るもの。国田さんの作品は、『レザー製品はこうあるべき』という固定観念にとらわれない、自由な発想が新鮮でした。微妙に色合いが異なるピンクの配色もすばらしいですよね。これはすべて、彼女のセンスがあってこそ。受賞という結果に結びついて、僕も感無量です」
小さいころから、よく絵を描いていたという国田さん。プラモデルなどの立体造形も好きだったという。
「でもプラモデルって、他人がつくったパーツを組み立てるだけじゃないですか。なので、自分で段ボールをカットして部品をつくって組み立てたり、そんなこともしていました」
今回の受賞作品はその延長線上にあるのかもしれない。
「姫路工業高校に進学したのは、中学時代に出会った美術の先生の薦めがあったからです。姫工なら、ものづくりの勉強が思う存分できるよ、って」
授業、製作、部活と、全力で姫工生活を楽しんでいる国田さん。
「卒業したら就職するか、進学するか、今、ものすごく迷っています。バイクのデザインにも興味があるんですよね。お父さんが何台も持っていて、大事そうに手入れしているのを間近に見ているので」
ジャンルも素材も越えての、ものづくりへの飽くなき興味。その自由な探求心は、彼女をどんな未来へと連れていくのだろうか。
文=中村真紀
写真=江藤海彦