AI等の登場によりデジタル化の進む昨今、“面倒くさいこと”は極力合理的にその存在を消され、“ムダ”のない世界になりつつある。その中で、敢えてそれらを靴のデザインや製法に取り込んでみる。
互い違いになっているハトメは一気に靴紐を締め上げることを許さず、1つ1つ順番に締めていくことを求める。面倒くさい。
アッパーはミシンを使用せず、1針1針手縫いしている。これも面倒くさい。
甲部分と後ろにあるベルトパーツは取り外し可能だが、フィット感の調整は不可能。機能的に“意味が無いムダ”である。
脱ぐ時、履く時に感じる面倒くささが愛おしい。
そんな風に感じられる心の余裕を持ちたい。
日本の皮革加工技術を顕在化させるため、メインの皮革の色は’赤’に統一。また「日本」と「情熱」をテーマにした時、やはり’赤’がベストであると考えました。同じ色でも様々な表情の皮革があることを示しました。
AI技術の発達、デジタル化が進む世の中に対して、敢えて’面倒くさい’や’ムダ’を楽しむ心の余裕を持っていたいという想いをデザインに込めています。