「ひとつのモノを楽しみながら大切にすること」をコンセプトに、革と漆を組み合わせて表現しました。漆というと一般的に装飾的な印象が強いかもしれませんが、根本にあるのは素材の強化です。腐りやすく割れやすい生地に、漆を器に塗り込み長く使えるモノにしていました。そこで革に漆を使い「靴の機能的耐久性」と「革と漆の経年変化と装飾性」の両者を革靴に付与することに至りました。山梨県の伝統工芸品のひとつである甲州印伝は鹿革に漆をのせた美しい見た目に。靴のヒール部とウエスト部には拭き漆を施し、漆特有の光沢感と靴の変形を防ぐ耐久性を。漆と革の経年変化を楽しみながら何十年と付き合える一足に仕上げました。
1本の木から200gしか取れない貴重な漆は、木地や革といった素材と組み合わさることで長く生き続けることができる素晴らしい資源のひとつです。古くから伝わる伝統技術により長く使い続けることも可能です。私は、新たな素材開発だけが正解ではないのではないか?と考えます。