私の近所に暮らす女子高生が、部活中に足を怪我して松葉杖生活になりました。
彼女は地味で見栄えのしない松葉杖で、毎日少し恥ずかしい気持ちで復帰を目指していました。私は使っていて心が明るくなる、楽しくなる松葉杖で復帰を目指して欲しいと考えました。地味なイメージのある福祉用具ですが、猪が足腰の神様と言われる言い伝えが私たちの故郷にはありますし、猪突猛進で夢を追いかけてほしいという思いも込めました。そして何より命を繋いだ、物語を紡ぐプロダクトとしてこのコンセプトにしています。
野生で生きていた証の傷、生息野山で違う個体差、人が手を加えたことで生じるナイフ跡、それら生が辿ったプロセスを1つの個性として生かし、次の命へ繋ぐ唯一無二のデザインとして仕上げた作品です。私の故郷、島根県雲南市でおきている年間2,000頭以上の獣害被害対策としての殺傷と、大量破棄という課題を未来へ繋ぐ応援へと変えたい。そんな思いを込めて作りました。