鹿による食害は山林に深刻な影響を及ぼしており、作者の住む四国においても早急な対策が必要とされている身近な問題である。作品は国内で駆除された鹿を素材とするレザーでできており、積極的に使用することで、日本における健全な山林環境を保つ一助となればと考え企画した。
鹿革の持つしなやかさとフラップをゴム紐で巻き留める仕様によって、内容物の形に柔軟に対応。またプルタブ型の金具を組み合わせ、フックに掛けることでスムーズな留め外しを実現した。また何よりの魅力は、床面の滑らかさと独特の弾力が生む、撫でさすりたくなるような「愛で感」である。ユーザーが手に取るたび、ささやかな幸福を感じていただけると嬉しい。
作者は四国の高地で育ったが、幼い頃に山を埋め尽くしていた高山植物は今や見る影もない。増えすぎた鹿による食害がその原因の一つと言われている。個体数を減らすべく駆除事業が行われているが追いつかず、さらに駆除された鹿は活用されず廃棄されることも多い。だが近年そういった鹿をレザーとして利用する事例が出てきた。消費量を増やすことで駆除を後押しし、個体数の適正化による環境回復の助けとなりたいと考えた。