トランスフォーム機能で
鮮やかに進化
2024年版
〝刺し子ライダースジャケット〟
トランスフォーム機能で
鮮やかに進化
2024年版
“刺し子ライダースジャケット”

ウェア&グッズ部門 フューチャーデザイン賞 パンチングレザー 刺し子ライダース ver.3 type.Bandana 有限会社 オベリスク 石橋 善彦 さんの画像 ウェア&グッズ部門 フューチャーデザイン賞 パンチングレザー 刺し子ライダース ver.3 type.Bandana 有限会社 オベリスク 石橋 善彦 さんの画像

2024年度 グランプリ

ウェア&グッズ部門
フューチャーデザイン賞

パンチングレザー
刺し子ライダース
ver.3 type.Bandana

有限会社 オベリスク

石橋 善彦 さん

「パンチングレザー×刺し子」という斬新な組み合わせで、2023年度グランプリを受賞した石橋善彦さん。なんと、2024年度も見事頂点に輝いた。今作もまた刺し子を施したジャケットだが、そこに進化があればこその2年連続受賞。細部にまでこだわりの光る作品づくりに迫る。
石橋 善彦さんの作品 パンチングレザー 刺し子ライダース ver.3 type.Bandana の画像

トランスフォームする
レザージャケット

今作のメインテーマは、「トランスフォーム」。付属のネックウォーマーは、外した際にジャケットの裾にボタンで取り付けることができ、さらにその中に同じく付属のグローブを収納できるポケットがある。グローブを単に放り込む形ではなく、中のフックボタンから吊り下げられる仕様で、燕尾に役割を変えたネックウォーマーの美しいフォルムを壊さない。

石橋 善彦さんの作品 パンチングレザー 刺し子ライダース ver.3 type.Bandana の画像

「自分自身、冬はいつもネックウォーマーと手袋を愛用しているんです。でも、あたたかい屋内に入って外した時に、問題になるのは置き場所。僕はあまり鞄を持たないので、いつもそのやり場に困っていたのが、作品誕生のきっかけです」

長年の着用を想定し、随所に設けられた修理用ファスナーは、前作から引き続き健在。切りっぱなしのように見える袖の裏地も、縫い付けないことで裏地との間に手を入れて刺し子の修復を可能にしている。デザインと機能性を見事に両立した設計になっているのだ。

石橋 善彦さんの作品 パンチングレザー 刺し子ライダース ver.3 type.Bandana の画像

日本の伝統技法を、
アメカジテイストに昇華

もちろん刺し子模様についても、前作から大きな進化を遂げた。
「前回は、刺し子初挑戦ということもあり、伝統的な和風の柄を採用しました。対して今作は、糸をあえて革と同色にして全体の一体感を出しつつ、柄はバンダナをイメージしたアメカジ風の大胆なものにしています」
革は、羊のタンニンなめし。最終的に洗いをかけてシワをつけることで、ヴィンテージのような雰囲気を演出している。

石橋 善彦さんと ふたりの娘さん の画像

そのアメカジムードをさらに盛り上げるのが、背面のワッペンだ。これは、石橋さんのふたりの娘の名前がモチーフになっている。
「それぞれ『W』『M』で始まって、『O』で終わるとバランスがいいなって。デザインに落とし込んだ時のことを考えながら、生まれた時に名前をつけたんです」
今後オーダーを受ける際には、注文者のリクエストに応じて文字をカスタマイズすることを想定している。

石橋 善彦さんの作品 刺し子ライダース 3部作の画像

サッカー観戦 × 刺し子作業?

じつは石橋さん、昨年のグランプリ受賞作品を完成させたあと、「もう刺し子はやらない」と、心に決めていたという。 「昨年の作品は、刺し子だけで40時間かかったんです。あまりにも大変だったのでこれが最初で最後、と思っていたのですが、まさかのグランプリ受賞。お礼の意味を込めて派生作品をつくろうという気持ちになり、今回は2作品、前回の作品と併せて3部作になる形で制作しました。結果、今年は1体に150時間かかったので、刺し子だけで合計300時間です(笑)」

現在石橋さんは、レザーアイテムブランド「オベリスク」でプロダクトマネージャーとして勤務している。忙しい毎日の中で、一体どのように制作時間を確保していたのだろうか。

「娘がサッカーをやっているんですが、その練習に付き添うと、どうしても手持ち無沙汰な時間が出てくる。その時に刺し子はぴったりだと思って、現地で作業をしていました」 空き時間を活用することで、ものづくりの可能性は無限に広がる。費やした膨大な時間には、そんなメッセージも込められているのだ。

石橋 善彦さんの作業風景画像

プラモデルに見出す、
レザーアイテムとの共通点

幼い頃からものづくりが好きだったという石橋さん。大好きなプラモデルは、いまの仕事場にもその箱が置かれていた。
「気分転換に、たまにつくるんです。もうこれで最後にしようとは思っているんですけどね(笑)。でも、プラモデルと革製品って、ちょっと似ているところがあるように思うんです。接着剤とかテープとか、一般的な布の服には使わないような材料も使って、立体的に組み立てていく作業なので」

今回の刺し子のように、細部にまでこだわって色や模様を仕上げていくという面でも、レザーアイテムにはプラモデル的なおもしろさがあると、石橋さんはうれしそうに話す。

石橋 善彦さんの作業風景画像

仕事から解き放たれてこそ、
できること

レザーアワードにはこれまで8回ほど出品しているが、「いいものができたら、出す」という、気負わぬスタイルは常に変わらない。
「仕事と自分の創作活動は、はっきりと切り分けています。お客様に提供する商品は、ミシンのひと目まで仕上がりを追求して、プロとして責任をもったものづくりを。創作活動は、あくまで空いた時間や休日に、好きなことを。とことん自由に取り組んでいます」

最後に、これまでつくった作品のなかで一番のお気に入りを聞いてみた。
「やっぱり、今回受賞した作品ですね。でも、死ぬ時に同じことを聞かれたら、『僕の最高傑作は娘です』って答えたくって。だからこそ、家族との時間も大切にしています」 決して当たり前ではない日常を、1日1日いつくしむ。その丁寧な積み重ねこそが、人の心をぐっとつかむ豊かな感性を育んでいるに違いない。

2023年度 グランプリ/ウェア&グッズ部門 ベストプロダクト賞
https://award.jlia.or.jp/2023/list/detail.php-no=J23A-6932.html
2016年度 ファッション雑貨部門 部門賞
https://award.jlia.or.jp/2016/winner/index.html

文=中村真紀
写真=江藤海彦

作品ページ
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受賞者一覧

石橋 善彦 さん

2024年度 グランプリ

ウェア&フューチャーデザイン賞

有限会社 オベリスク

石橋 善彦 さん

トランスフォーム機能で
鮮やかに進化
2024年版
“刺し子ライダースジャケット”

菊池 敏哉 さん

フットウェア部門 ベストプロダクト賞

個人

菊池 敏哉 さん

鮫革の独特な表情を
引き立てる
細やかなデザインと
手仕事が詰まった一足

佐藤 周平 さん

バッグ部門 ベストプロダクト賞

エース株式会社

佐藤 周平 さん

アイデアは、
職場にあふれる段ボールから
折り畳み可能な
ミニマルレザーバッグ

野村 孝之 さん

ウェア&グッズ部門 ベストプロダクト賞

革きもの アルティジャーノ

野村 孝之 さん

革、着物、シルクという
3つの天然素材を使用
孔雀をテーマに女性の
美しさを表現したコート

能澤 大輔 さん

フリー部門 ベストプロダクト賞

青森県立青森第一高等養護学校

能澤 大輔 さん

物語の世界から
飛び出してきた!?
不気味でユーモラスな
宅配ボックス

藤原 崇晃 さん

フットウェア部門
フューチャーデザイン賞

藤原化工株式会社

藤原 崇晃 さん

長年培った
加工底の技術で実現
現場の声を反映した、
新時代のシニア靴

椎名 賢 さん

バッグ部門 フューチャーデザイン賞

Ken Shiina Design Laboratory

椎名 賢 さん

ジビエレザーの
傷を装飾に昇華
金継ぎの技法に着想を得た
トートバッグ

河本 静香 さん

フリー部門
フューチャーデザイン賞

sunao

河本 静香 さん

伝統的な「茶箱」を
革でアレンジ
お茶の時間を彩る、
独創的かつ上質な秀作

吉田 謙太 さん

学生部門 最優秀賞

文化服装学院

吉田 謙太 さん

ディテールに表現された、
“馬の骨格”
若き発想が光る
斬新なレザーウェア

岡田 憲樹 さん

アーティスティックデザイン賞

株式会社 村瀬鞄行

岡田 憲樹 さん

端切れ革を
無駄にせず有効利用
甲冑をイメージした
進化型ランドセル

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